一般社団法人 国際交流サービス協会

IHCSA主催「定例講演会」を開催しました

IHCSA主催「定例講演会」開催

2019年6月10日(月)、六本木の国際文化会館において、当協会主催「定例講演会」を開催し、100名以上の方々にご参加いただきました。
 今回は、平成の天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)のおそばに宮内庁侍従・侍従次長として17年間お仕えした明治神宮国際神道文化研究所 佐藤正宏 所長に、「平成の天皇像 ―侍従としてお仕えして―」というテーマでご講演いただきました。
 まず、民間から宮内庁侍従になった経緯を説明されてから、両陛下のお住まいである御所と公的なお仕事の場である宮殿における天皇陛下の日常の生活や業務について、一般にはなかなか知り得ないエピソードなどを交えながら具体的に紹介されました。

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 天皇の象徴性という概念は戦後の新憲法に初めて導入されたもので、象徴天皇として社会の要請や人々の期待に応えるにはどうしたらよいか、「象徴としての勤め」とは何かをずっと模索されつつお勤めを遂行されてきました。天皇と国民との関係については、なによりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切にされてきました。天皇皇后両陛下ご自身が、特に高齢者、障害者、社会的弱者に心を寄せることを大切な務めであると思っておられました。平成の時代は自然災害が多く、各地の被災地を見舞われ、被災者を慰め、勇気づけてこられました。腰を落とし、膝をついて、被災者と同じ目線でお話になるという新しいスタイルを取り入れられました。どのようにしたら国民と心を通わせられるか、象徴とは何かという問いへの答えを真摯に模索された結果でした。
 平成は急速に外国との関係が深まった時代でした。国際親善に関して陛下は、国と国との関係は人と人との関係であり、親善は国民どうしの触れ合いによって築かれるとのお考えだったので、できるだけ多くの市民との触れ合いを望まれました。1人ずつ目線を合わせて真摯に向き合われるので、侍従として事前調査においていかにこのような場面を設定できるかに心を砕きました。本番において、両陛下にお会いしてほんとうに良かった、と幸せそうな人々の笑顔見るときこそ侍従冥利に尽きる瞬間でした。国際親善の先には、陛下の平和への強い思いを感じました。
 ご即位以来象徴としての天皇の務めを模索してこられた結果、到達されたのが「現場主義」でした。市井の人々と心を通わせ、外国でも現地の市民と直に触れ合うことが象徴天皇としての務めだとお考えになっていました。現場主義を貫くとなるとそれなりの体力が必要で、年を取ると全身全霊でお勤めを全うすることが難しくなります。天皇としてのお勤めを将来にわたり途切れることなく安定的に継続することこそ国にとってまた国民にとって重要だと考えられ、そのためにお元気な今のうちに次の天皇に譲位するのが最善だと考えられたのです。
 神道は宗教というよりも、生き方や慣習、習俗そのもので、日本の風土と密接な関係があります。全ての存在を生み出し、生かしめるものを「神」と呼び、畏敬と感謝の念を捧げてきました。多くの神が調和的につながっていることを前提とすれば、他者・社会のために生きることが自分のためになる、そして今の世の中に最善を尽くすことが自分だけでなく次の世代の発展へとつながるという考えであります。外国人が感嘆した災害時の冷静さや、秩序正しく助け合う様子はこのような信仰の現れでした。

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 講演会終了後のアンケート回答では、「天皇陛下のお人柄や国民への接し方、また象徴としてのあり方を模索する姿がよく理解できました。」「本日お聞かせいただいた貴重なエピソードにより、平成の天皇・皇后両陛下の本当に温かな人間性に改めて感銘を受けました。」などの感想が寄せられました。
 両陛下自ら精力的に国内外各地に赴きいろいろな方々と触れ合う姿をビデオで見られ、参加者は臨場感あるイメージを持って理解を深めることができました。

【佐藤正宏氏プロフィール】
○昭和16年、東京生まれ
○小学校3年間はフランスで過ごし、高校時代はアメリカで過ごす
○東京大学経済学部卒業
○東京銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行
○パリ支店次長、ブリュッセル支店長を歴任
○平成7年宮内庁侍従を拝命
○平成20年侍従次長を拝命
○豊富な海外経験を活かし、天皇皇后両陛下の海外19カ国の公式御訪問に供奉
○平成24年6月退官
○平成24年9月明治神宮国際神道文化研究所 所長に就任、現在に至る
○瑞宝中綬章、ベルギー王冠勲章オフィシエ章を受章

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